8月5日 EPISODE1: 山とカレイ
AM5:00頃、目が覚めた。
昨日の天体ショーのおかげで、ぐっすり眠ったような気がする。
今日はとうとう、この島を離れる日だ。
まだここに居たいような気もするが、今回は十分すぎるくらい遊んだので、また来ることにしよう。
テントとタープをたたみ、積み込む荷物のパッキングはすべて終り、単車に積み込んだ。
今日も朝早くから利尻富士めざし て登山をする人たちを何人も見かけた。
登山もしたかったが、靴は単車用のショートのウェスタンブーツとビーチサンダルしか持ってきていなかった。
さすがにこれじゃ山は登れない。登山家に説教をくらってしまいそうだ。
そのため、今回は登山を諦めたというわけだ。
「来年は絶対、利尻富士に登ってやる!」
と思いながら、エンジンに 火を入れ、お世話になった利尻北麓野営場を別れを告げ、フェリーターミナルのある鴛泊港へと向かった。
AM6:00頃、諦めの悪い俺は、この島に来てから一度も釣り上げていない「クロガシラ」を釣るために、ちょっとの間だけ竿をだすことにした。フェリーの出港時間はAM8:40である。
出港手続きを含めても、1時間ちょっとは遊べる計算だ。
この前、フェリーターミナルの作業員が教えてくれた「赤灯台」で竿を出した。
海は昨日と変わらず潮の流れがほとんどない。1時間くらいやってみたが、相変わらず、今日も「坊主」である。
もうあまり時間もないのでフェリーターミナルへ戻ることにした。
ああ、心残りは、
「山とカレイ」
8月5日 EPISODE2: また、やっちまった。。。
AM7:30頃、フェリーターミナルに戻り、帰りの船の乗船手続きを済ませた。
なんだか、腹が空いてきた。
まだ時間もあるので、フェリーターミナルの側にある食堂に入った。
食堂には「おばあちゃん」といった感じの店員さんがいた。
なかなかいい味出してる食堂って感じだ。
「すみません。カツ丼ひとつ!」
と注文をしてから、10分前後に「カツ丼」が出てきた。
「ツーリング最終日ということもあり奮発しちゃったもんね。」
と、相変わらず、貧乏くさいことを考えながら 、「カツ丼」に手をつけた。
テレビではNHKの天気予報をやっていた。
俺は「カツ丼」を頬張りながら天気予報を見ていた。
「今日の道内のお天気です。」
「全道に晴れであり、気温が高くなるでしょう・・・・・・」
とのこと。俺は
「ふふふ。これで3勝2敗だ!勝ち越しだぜ!」
と心の中で笑った。
実を言うと、夏休み前、会社の仲間で東北ツーリングに数人で行くという連中に
「ふっ。東北は晴れだってさ。なんか、北海道は雨らしいねぇぇ~~~~。やっぱり、お前は。。」
と言われていたのだった。
その時は俺自身も「やっぱ、俺は。。。」とツーリング中すべて雨ではないかと思っていた。
そう考えると3勝2敗は上出来だ。
そして、この勝ち越しをテレビを見ながら、心の中で喜んでいた(ショボい。。。)。
すると、次の瞬間。
カタッ。。。。。。バシャッ!!
なにか音がした。ふと見ると
「あ”~~~~~~、みそしるこぼしちゃったぁ~~~~~~!!!!!!」
「あ”っち”ぃ~~~~~~~、め~~ちゃくちゃ、あぢ”~~~!!!!」
や、やっちまった。味噌汁が俺の皮パンを直撃!!
「あ”~~~!!! 俺の皮パンがぁ~~~~~~!!」
皮パンには味噌汁の汁と具がたぁ~~~っぷりとぶちまけられていた。
「か、皮パンが、味噌パンになってる。。。しかも、わかめ付き。。。」
と、わけのわからんことを考えつつ、店のおばちゃんにぞうきんを借りて、おばちゃんにあやまりながら、一人寂しくフキフキしていた。
そして、味噌汁は空っぽ。そして、俺の皮パンは味噌パン(うまそうだな。。。)。
だが、かろうじて上着は助かっていた。
「あやうく、味噌ジャン(韓国風か??)になるところだったぜ。」
とまた、わけのわからんことを考えつつ、諦めて、再びメシを食い始めた。
店の客はニヤニヤしながらこちらを見ていた。すると、おばちゃんが
「まだ、味噌汁残ってるから、これ飲みなさい。」
と鍋に少しだけ残って いた味噌汁をお碗にいれてくれた。
この何気ないやさしさが妙に嬉しかった。
一人旅をしているとちょっとしたことでも嬉しいものである。
その後、メシを食い終わり、御愛想してもらった。
おばちゃんにお礼を言い、店を出ようとしたとき、おばちゃんが
「これから走るんでしょ?また、災難にあわないように気をつけてね。」
ボツリと一言。なかなか、いいセンスしてるおばちゃんである。
俺は「はい、気をつけます。」と深々と頭を下げ店を出た。
店を出て 単車のところへ戻り、船に乗り込むまでの間、味噌パンになった
皮パンを乾かしながら、俺は反省した。
「ふぅ~~~、また、やっちまった。。。」
8月5日 EPISODE3: 潮風
皮パンが乾いた頃、フェリーの出港時刻に近づいていた。単車とともにフェリー
乗り場へと向かい、乗船。天気がいいので最上層の甲板へと向かった。
そこはイスもなにもない踊り場だったので海面が上から見える手すりの側に俺は腰を下ろした。
しばらくすると、船が出港した。
甲板の後ろの方で はユースホステルの人々に見送られて、大声で歌っているグループがいた。
「ああ、俺も9年前は礼文島であんな事してたなぁ。」
と懐かしみながら、利尻島から離れているフェリーの上から小さくなっていく利尻富士を眺めているとフェリーの後ろから物凄い数のカモメが追いかけてくるではないか。
「なぜだろう?」と思いながら見ていると乗客がスナック菓子を与えていたからであった。
俺の目の前で一人の女の子が「かっぱえびせん」の袋を取り出し、その中のえびせんを一つだけ手にもって海の方に差し出していた。
カモメはフェリーの速さにもめげずにそれを食べようとよって来るのだが、手からはうまく食べることができないようだった。「もぉ~~」と残念がる女の子だったが、しばらくするとカモメが追いつき、女の子がもっていた手から「かっぱえびせん」を食べた。
すると 、「おぉ~~。」と拍手まじりで周りの乗客が喜んでいた。
俺はそれを見ながら「あぁ~~~、なんてのどかなんだ。」と思いつつ、座り込んだまま眠ってしまった。
「潮風」 を浴びながら。
8月5日 EPISODE4: 熱風
フェリーのデッキで眠り込んでしまっていたが、目が覚めると稚内港が見えていた。
そろそろ到着である。それにしても日差しが強い。
ライダーベストから出ている腕の皮膚がヒリヒリしている。
この暑さの中、札幌まで320kmの旅をするのかと思うと、ちょっと辛い。
しかし、今回のメインである利尻島の旅を終えた今となっては、他に寄る予定も無く、とっとと帰りたい気分になっていた。
そんな中、フェリーが港に着き、単車のあるデッキへと降りた。
行きと同様、ゲートが開き、車がすべて降りた後に単車が降りる。
「さあ、がんばるぞ!320km。結構、長いけど。。。」
と気合とも溜め息ともつかないようなことを考えながらフェリーを降りた。
そして、稚内市内を一気に抜けることにした。それにしても暑い。
晴れてるのはいいが、320kmも走ることを考えると暑くて嫌になってくる。
「ああ、雨降らねぇかなぁ~~。」
などど、贅沢なことを考えながら、信号待ちしていると、
「こんにちはぁ~~!暑いですねぇ~~~~」
と横に並んだSR400(だと思う。)のライダーが話し掛けてきた。
「そうですねぇ。今日はどちらからですか?」
と俺が聞くと
「手塩からです。これから宗谷岬に行くんですよ。そちらはどこまでですか?」
と言われたので「札幌までです。」と答えると。驚いた顔をして、
「この暑いのに、そんなに走るんですか?大変ですねぇ~~。」
と返された。俺は心の中で「あぁ~~、まったくだ。まったくだ。」と納得してしまった。
そして、信号が青になり、彼が「それじゃ、気をつけて!」と言って去って行った。
彼は滋賀ナンバーであったが、内地(本州)の人間が暑いっていうんだから、相当暑いのだろう。
俺はそのまま稚内を抜けR40に入った。
もう、そこからは、走った、走った。あぁ~~~~~~走った。
G.S以外はどこにも寄らず、手塩町を抜け、そして、R232に入り、羽幌、留萌市を突き抜けた。
危険なのだが暑くて何も考えられなくなっていた。
そして、北竜町に入る頃、あまりの暑さで意識が薄れてきた。
単車で走っているにも関わらず体には「熱風」が吹いてくる。
「や、やべ、、た、倒れそう。」などど考えながら走っていた。
するとなぜだかわからんが利尻島の食堂のおばちゃんの 一言をふと思い出した。
「これから走るんでしょ?また、災難にあわないように気をつけてね。」
この言葉を思い出した俺は道端に単車を停め、草むらに大の字になって休むことにした。
そのまま眠ってしまおうかと思ったが、直射日光が俺を襲う。暑い。
でも走ってたら意識がなくなりそうだったので、そのまま30分くらい体をやすめた。
少し休んだせいか、頭がボーッとしていたのがとれたようだった。
そして、再び走り始めることにした。
もう諦めるしかなかった。
「こんな暑い中、走ったのは始めてだ!」
と出発の日とは、まぁ~~~ったく逆のことを考えていた。
行きは「暴風」、帰りは「熱風」かい!
と再び、受け容れることしかできない自然現象に一人ギレであった。
8月5日 EPISODE5: ただいま
クソ暑い中、北竜町、雨竜町、浦臼町と一気に走りぬけた。
単車に積んでいる荷物のせいで、乗っているポジションがいつもと違うせいか、なんだか、膝が痛くなってきた。
あまりにも痛いので、途中のパーキング(といっても車3台分だが。。)に単車を停めて休むことにした。
ボーッとしていると、クラクションが鳴った。振り向くと40~50歳くらいのオッチャンライダーがピースサインと共に走り去っていった。
それにしても、中年ライダーというのはかっこいいものである。俺もいつかは、そうなりたいと思っている。
そして、老年ライダーとなり、ばあさんをサイドカーに乗せて走ってみたい。
まあ、それは置いといて、パーキングで休んだ後、札幌まで数十kmなので、一気に走りきることにした。
そして、札幌市内へと入り、自宅のある東区へと向かった。
そして、自宅に到着だ。
「ただいま~~~~。やっと着いたよ。」
と、何事も無く、無事に終わったこの旅を振り返りながら心の中でつぶやいた。
単車をいつもの駐車場に入れ、荷物を降ろした。これで、この旅は終了だ。
たった5日間ではあったが、なかなか楽しい旅ができたことに感謝したい。
荷物を片づけながら、俺は思った。
「さぁ、来年はどこに行こうかな。」
そして、今年の旅の幕は閉じた。